104才であの世に行った夫の母の、いい話

春は気まぐれとはいえ、さっきまでの青空が曇天になり雪でも降りそうな気配です。
雪で思い出すのは何故か先ず姑のこと。一月末に首都圏に降った雪の時も、朝の7時半、雨戸を開けたら一面の雪景色!美しい!と思ったその後に、恍惚として眺める私の脳裏に突然、義母の面影が浮かびました。ずうっと昔のある雪の日に見せた、80代後半とは思えぬ朗らかな笑顔が私を見つめているのです。

義母が生前だったある大雪の日のこと。
雪かきをしようとほうきを持った私の横で「これから散歩に行ってきます」と軍手をはめてます。
「えっ、おかあさん、雪で転ぶ人が続出してるから外に出るなと盛んにテレビがいってますよ」と止める私に、「これしきの雪で驚いてては生きては行けない」と颯爽と飛び出して行きました。
その自信満々の姿は「転倒事故が続出、不急不要の外出は避けて下さい」と繰り返えすアナウンスを、それいけ行進曲と聞き違えている様子。老婆とは思えぬ足取りで飛び出して行きました。止める私を振り切って。
「ふん!すっころんで足の一本も折ればいいわよ」といじわるな私。しかし思いも空しく、しばらくすると頬を紅潮させて帰ってきました。
「自動車はだらしないですね、この老婆がホイホイと上る坂をツルツル滑って登れない。私は『ほれガンバレ、それガンバレ』と手拍子で応援してあげたのに、ついに戻って行きましたよ」
うれしそうに何度も話すのでした。自動車の運転手もどれほどハラが立ったことか。
「スゴイ婆さんだ!」と、雪が降るたびに鮮やかに思い出すのです。

この気丈な義母もやがて認知症になり、自慢の娘の名も顔すらも認識できず周囲を混乱させて104歳で旅たちました。
それから何年が過ぎたことだろう。「今は意地悪されたことも、お財布だけもって泣きながら夜道を歩いたことも、ただ全てが懐かしいだけよ」と話す私に、「随分と年寄臭いこと言うわね。あなたの原動力は怒りよ!怒らないすみれなんて魅力なし」と、仲良しがからかいます。

もし今義母が生きていたら私は常に怒り、脳が活性化され、認知症の心配もなく、怒りまくって書いた本がベストセラー!ってことがあったかも?
まったく、ホントに!もっと長生きしてればいいのに。「え、え、え、頭がおかしいよ」と義母が笑ってます。春ですもの!

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